2015/04/01(水)トコロザワ・スゴイアツイ・ドーム

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(これまでのあらすじ)暗殺野球のプロフェッショナル、サブスティテュートに辛くも勝利を収めたニンジャスレイヤー。その舞台となったオニタマゴ・スタジアムの50キロ西の地で、ニンジャとはまったく関係のない死闘が繰り広げられようとしていた。

トコロザワ・スゴイアツイ・ドーム。丘陵地帯に位置することを最大限に活かした自然環境共存型のドーム球場だ。UFOめいた屋根で天を覆うものの、外周を設けず屋外の空気を取り入れることで、外気が冷暖房の役割を果たす実際エコなスタジアムである。

しかし、それは表向きの顔であるに過ぎない! このスゴイアツイ・ドームは暗黒メガコーポ、ケルベロスファンドのアジトであり、その内部ではアンタイ・ピッチャー・ウィルス「ネツレツカンゲイ」の開発が行われているという。ジャーナリストのジューシロ・カリスマから情報提供を受けたヌマジャスレイヤーは、単身スゴイアツイ・ドームに乗り込むのであった。

ドームの天井では「ほとんど敗退行為」「実際弱い」「ご飯がススム」といった刺激的なミンチョ体のネオンが瞬き、グラウンドでは雌雄のライオンを模したキャラクターたちがダンスを披露している。雌ライオンのバストは豊満であった。

マスコットたちをやり過ごすと、三塁側のブルペンが目に入った。そこにはクローンオレタチが陣取り、投球練習を繰り返している。ヌマジャスレイヤーのジュー・ジツをもってすれば勝負にもならない相手だとはいえ、これからの闘いを考えれば真正面からぶつかるのは愚策である。

「イヤーッ!」ヌマジャスレイヤーは「加藤良三」とショドーされたボールを立て続けに投擲! 「グワーッ!」「グワーッ!」「グワーッ!」「グワーッ!」クローンオレタチはしめやかに失点! ワザマエ!

クローンオレタチを始末したヌマジャスレイヤーは、マウンドから自分を射る視線に気がついた。マウンドを見つめるヌマジャスレイヤー。二人の視線がぶつかり合った。

マウンドに立つ男がヌマジャスレイヤーに向かってオジギをした。「ドーモ、ヌマジャスレイヤー=サン。ビッグストーンです」ヌマジャスレイヤーもアイサツを返す。「ドーモ、ビッグストーン=サン。ヌマジャスレイヤーです」オジギ終了からわずか0.015秒後、先に動いたのはビッグストーンだった。

「イヤーッ!」キャッチャーに向かって投げたボールがことごとくストライクゾーンを外す! フォアボールでノーアウト一塁!

「イヤーッ!」キャッチャーに向かって投げたボールが吸い込まれるようにバッターを直撃する! デッドボールでノーアウト一二塁!

「イヤーッ!」キャッチャーに向かって投げたボールが絶妙な位置に転がされる! 送りバントでワンナウト二三塁!

「イヤーッ!」キャッチャーに向かって投げたボールが見事にミットに収まるがそのキャッチャーはボックスの外に立っている! 敬遠でワンナウト満塁!

「イヤーッ!」キャッチャーに向かって投げたボールが手前でワンバウンドして大きく弾む! ワイルドピッチ! 「サヨナラ!」ライオンズの白星は爆発四散!

察しの良い読者の方は、このジツがかつてオレタチの総帥として君臨したビッグマーシュのヒサツ・ワザと同じものだということに気づいただろう。伝説の総帥のジツを使いこなすビッグストーン。彼のカラテは恐るべきものだ!

「グワーッ!」その圧倒的な火力がヌマジャスレイヤーに襲いかかった! あれだけ大量にあったリードが吐き出されていく。オレタチの前ではセーフティリードなどというものはないのだ!

去年の苦しかったシーズンのことがソーマト・リコールめいてヌマジャスレイヤーの視界に去来する。「9回を、任せてみたら、行ったろこれ」とハイクを残してマキタ=サンの白星が爆発四散。あのような悲劇を繰り返してはならない……!

「Wasshoi!!!!」ヌマジャスレイヤーは跳ね起き、猫めいて空中で回転すると、しなやかな動作でマウンドに降り立った。体力の消耗が激しい。チャンスは一度だけであろう。ヌマジャスレイヤーは美しいワインドアップから伸びのあるストレートを立て続けに投げ込んだ!

「イヤーッ!」「アアアアイイイッッッ!!!」「イヤーッ!」「アアアアイイイッッッ!!!」「イヤーッ!」「アアアアイイイッッッ!!!」「イヤーッ!」「アアアアイイイッッッ!!!」「イヤーッ!」「アアアアイイイッッッ!!!」「イヤーッ!」「アアアアイイイッッッ!!!」「イヤーッ!」「アアアアイイイッッッ!!!」「イヤーッ!」「アアアアイイイッッッ!!!」「イヤーッ!」「アアアアイイイッッッ!!!」

暑苦しい電子シライ音声がドームに響き渡り、UNIX電光掲示板に0の数字が灯される。三者連続三振! タツジン!

「グワーッ!」抜群の制球力を前にし、ビッグストーンは苦悶の声を上げた。先発投手が完投すればオレタチの出番はない。公認野球規則にもそう書かれている。

「ハイクを詠むがいい、ビッグストーン=サン」冷たい視線でビッグストーンを見下ろすヌマジャスレイヤー。「先発を、無理矢理させられ、インガオホー……」「イヤーッ!」「サヨナラ!」ビッグストーンは登録抹消!

だが……ナムアミダブツ! ビッグストーンが抹消されたあとも、ファームから新しいオレタチが登録されてくることだろう。これで闘いが終わったわけではないのだ!

「……これは?」ヌマジャスレイヤーはビッグストーンの去ったあとにオリガミ・メールが残されていることに気がついた。そこに記されているのは「マンジ・ストラックアウト」の文字。これはネツレツカンゲイに至るための暗号かもしれない。ヌマジャスレイヤーはオリガミ・メールを懐にしまい、さらに先を目指すのであった。