2015/04/28(火)伊原春樹『指導者は嫌われてこそ一人前』感想

2015/04/28 23:42

本書は2部構成で、第1部では理想の監督像を追いかけ、第2部では走塁理論についてまとめられています。

第1部は想像の範囲から外れたような内容はほとんどなく、おそらく皆さんの想像通りの内容が書かれています。森監督、原監督を絶賛している一方、野村監督にネチネチ嫌味を書いている辺りは苦笑せざるを得ませんでしたw

意外だったのは東尾監督も高く評価していたことくらいですかね。最初の監督就任時に「普通にやれば勝てる」と言っていたのは、同等の戦力で優勝できなかった東尾への当てつけだと思っていたのですが、そういう意図はなかったようです。

そして第2部。こちらはページをめくる手が止まりませんでした。打者走者を含め、それぞれの走者が場面に応じてどのようにプレイすれば良いのか、また、コーチはどのように指示を出せば良いのかがまとめられていますが、これが非常に面白かった。たとえば「一塁走者」についてだけでもこれだけの項目について書かれています。

●相手のサイン ●クセ盗み ●けん制 ●リード ●帰塁 ●盗塁 ●スランプ ●中間走 ●スライディング ●一塁走者のみの状況 ●野手のタッチプレー ●一塁線のゴロ ●けん制での飛び出し ●無死一塁での基本 ●一死一塁での基本 ●無死または一死一塁での左中間、右中間、左翼線、右翼線への打球判断 ●右翼線方向の安打 ●低いライナー打球 ●外野への飛球 ●バントでの判断 ●エンドラン ●ワイルドピッチ、パスボール ●ピックオフへの注意 ●一、二塁での一塁走者 ●無死一、二塁での一塁走者 ●一死一、二塁での一塁走者 ●一、三塁での一塁走者 ●無死または一死一、三塁での浅いフライ ●無死または一死一、三塁での内野前進守備 ●満塁での一塁走者

それぞれの項目について選手やコーチが何をするべきなのか、あるいはするべきではないのか、どんな点に注意するべきかといったことがまとめられています。ある程度常識的なことも書かれていますが、「そんな細かいところまで観察しながらプレイするのか」という驚きもありました。これらのことを人に伝わる形で明確にまとめられるというだけで、超一流の走塁コーチなのだということを改めて感じます。

また、野村監督と上手く行かなかった理由も何となく分かったような気がしました。これだけの理論を確立していれば、同じように理詰めで采配を振るっている野村監督の理論と相容れないケースもあるでしょう。伊原さんの理論では「一つでも先の塁を奪うこと」に重点が置かれていますが、監督の立場からすればもうちょっと引いた視点から試合を見ている。勝つために選ぶ選択肢が異なることも多々あったでしょう。それが積み重なれば大きなすれ違いになってもおかしくありません。お互いに思ったことをすぐ口に出しちゃいそうだしw

残念だったのは、あくまでも2部構成の片方であったため、この走塁理論については60ページほどしか書かれていなかったこと。ぶっちゃけ第1部はいらないので第2部だけで1冊書いていただきたかったw

というわけで、本屋さんで第2部をチラ見していただいて、気に入った方はお買い求めいただいても損はしないと思います。かなり客層を選ぶとは思いますが。