2006/07/07(金)阪神電鉄と阪急ホールディングスの経営統合
野球ネタに釣られて、フォーキーさんのブログにコメントを書こうと思ったのですが、あまりにも長くなったのでこちらに書くことにします。ほらそこ、首位攻防戦惨敗で現実逃避して長文書いてるとか言わない!
http://bara.seesaa.net/article/20391441.html
いろいろ気になって調べてみたら、横浜ベイスターズの筆頭株主がTBSになった時は30億円の支払いは発生していないのに、今回は親会社が変わらず、親会社の株主が変わっただけで30億円なんですね。
阪神の30億円 [フォーキー★カーニバル:2006-07-07
私もお子ちゃまなので的外れなことを言っているかもしれませんが……。
今回の件に関しては、その違いがあるからこそ30億円が発生したと思っています。「球団の親会社を買収すれば、球団自体を買収しなくても金銭的リスク無しに球団を保有できる」という前例を作りたくなかった、というのが他チームのオーナーの思惑でしょう。しかも、TBSが親会社になった当時は「加盟料」であって「預かり保証金」ではありませんでしたし。
ただ、そもそもこの保証金制度というものが必要なのかどうか、という疑問もあります。「球団の親会社は、球団を長期間保有しなければならない」という前提自体が正しいのか否かという疑問です。この疑問に対しプロ野球ファンなら「長期間持ってもらわなきゃ困るだろ」と答えるでしょうが、よくよく考えてみれば、別に親会社がコロコロ変わったところで、球団自体に大きな影響が起こるわけではないんですよね……健全な経営をしていれば。
2004年のオリックス・近鉄の合併騒動の時にも話題になりましたが、日本のプロ野球は全試合が満員になっても黒字にならないチームがほとんどだそうです。つまり、球団を維持するためには親会社の金銭的なサポートが必須になります。ですから、そのサポートができない企業に球団を持たれると困ってしまうわけです。
この件に関しては「Jリーグを見習って身の丈に合った経営をしろ」ということを言う方が多いです。それは正論です。しかし身の丈に合った経営を今から始めると、おそらく年俸の大幅減額、高額選手の解雇が相次ぐでしょう。選手会がそれを受け入れるとは思えませんし、それで選手がメジャーに流れてもファンは失望すると思います。もう簡単には引き返せないところまで来てしまっているんですよね、残念ながら。
経営と所有の分離など、現代の資本主義と軌を一にしようとしないプロ野球業界。いいじゃん、球団の株なんて誰が持っても。もちろん上場しても。逆に、体力のなくなった会社が球団を保有し続けることの方がよっぽど問題なわけで。近鉄バファローズのことを忘れたとは言わせません。
阪神の30億円 [フォーキー★カーニバル:2006-07-07
先ほどの正論に基づいた意見としては、誰が球団を保有しようと特に問題は発生しません。ただ、現状はそうではありません。赤字を垂れ流す球団を「広告費だから仕方がない」と言える程度の体力がある企業に保有してもらわなければ困ります。
もちろん、数年間赤字を覚悟していた楽天も、昨年度はいきなり黒字だったそうで*1、黒字経営はやってできないわけではありません。ただ、イーグルスやイーグルスファンには失礼な言い方になりますが、イーグルスに関しては低年俸の選手をかき集め、無償で選手をトレードしてもらい、なんとかチームの形にしたという状態です。昨年はぶっちぎりの最下位、そして今年も交流戦後半から調子を上げてきたとはいえ現在28勝52敗。このレベルのチームが12球団揃ったとして、ファンを満足させることができるでしょうか。
ただ、このまま突き進んだとしても、いずれプロ野球全体が衰退するしかないんですよね。コストを削減すれば、確かに有力選手はメジャーに流れるかもしれない。それでも、少しずつ健全な経営にシフトしていかなければいけないとは思います。一朝一夕にできることではないですけど、長い時間をかけてでも、親会社に頼らない球団経営の形を目指して欲しいものです。
上場についてはちょっとよくわかりません。ナベツネが言うような「八百長が横行する」というのは行きすぎな意見だとは思いますが、ヨーロッパのサッカークラブでもあまり上手く行っていないというようなことを聞いたことがあります。サッカーには詳しくないのでよくわかりませんけど……などと書いておけば、きっとサッカーに詳しい方が助け船を出してくれるでしょうw
しょせん「大企業が催している興行」の域を出られないんですよね、日本のプロ野球は。すべての発想の出発点がそこにあるから、経営と所有を分離するわけにはいかないわけで。
それじゃ、スポーツはなかなか面白くならない。経営者が本当の意味で努力しないから。でもそういった「資本主義的な競争」に晒されたくないんでしょうね、オーナーたちは。自分で経営権を握っておかないと困るわけです。
阪神の30億円 [フォーキー★カーニバル:2006-07-07
資本主義的な競争というのが、他のスポーツ、あるいは他のレジャーとの競争という意味であれば全くその通りだと思います。保護された環境の中では、絶対に発展することはないでしょうから。
ただ、これが他球団との競争という意味であれば、それはちょっと違うと思います。他球団は確かにグラウンドでは敵ですが、球団経営という意味では運命共同体である存在です。相手がいなければ試合ができませんから。チームとしての実力と人気、ビジネス的価値はある程度比例しますが、それが完全に一致しない以上、資本主義的な競争をするべきじゃないような気がします。あ、ヨーロッパのサッカークラブで株式上場が上手く行っていないのって、この辺りが原因なのかな?
結論としては、今回は「以前球団を売却したことがある阪急だった」というのが致命傷で、他の企業であればここまで圧倒的な差で免除を却下されなかったような気がします。長々と書いておきながら、全てを台無しにする結論を出しておしまい。
*1:成績不振で選手の年俸の出来高部分をほとんど払わなくて良かったという、あまり嬉しくない事情もあったようですが……。