2009/12/28(月)ぬるぽのくせに生意気だぞ 第5回
オープンソース徹底活用WicketによるWebアプリケーション開発
- 作者: 矢野勉
- 出版社/メーカー: 秀和システム
- 発売日: 2009/03/12
- メディア: 単行本
- 購入: 23人 クリック: 238回
- この商品を含むブログ (46件) を見る
Strutsをはじめとした、JavaのほとんどのWebフレームワークは、Servletに皮を被せて作業量を減らすことを目指しています。つまり、そこでのコーディングでは、Java言語に対する深い理解やオブジェクト指向の知識はほとんど必要にならず、フレームワークの設定方法や約束事を知っていることが重要になります。
ところがWicketはそうではなく、Web上にオブジェクト指向を取り戻すことを目指して開発されました。WebアプリなのにSwingのような感覚でコーディングができるのです。ページもオブジェクトとして表現されるため、ページ間の値の受け渡しはコンストラクタの引数なりセッターなりで簡単に実現できます。セッションやhiddenを駆使する必要はほとんどなくなるのです *1 。素晴らしい。この世界では今までのデスクトップアプリの経験がそのまま活かせます。
このような性質を持っているので、Java言語そのものが好きな人にお勧めのフレームワークではあるのですが、それ以上に、フレームワークの約束事を知っているだけでデカい面をしている自称Java技術者のせいでJavaが嫌いになってしまった、私のような他言語の技術者にこそ体験して欲しいフレームワークのような気もします。
さて、この『WicketによるWebアプリケーション開発』ですが、現在のところ、唯一の日本語のWicket本です。
Wicketについて基礎的な部分から丁寧にまとめられているので、Wicketの初学者向けとしてはこれ以上ない本だと思います。ただ、Wicketというフレームワークの性質上、他のフレームワークよりは深いJavaの知識が要求されますので、JavaとWicketを一緒にマスターするのは厳しいと思います。興味を持たれた方はまずJavaの入門書から。
また、著者の矢野さんが実際にWicketを使用してきた中で培ったノウハウが各所に書かれているので、ある程度Wicketを理解した人がもう一歩先に進む手助けにもなると思います。「読んでサンプルを作って終わり」という感じではありません。そして、アプリケーションを作る上で必要になる各種クラスもかなり詳細に書かれているので、手元に置いておけばリファレンス的にも使えると思います。
値段もこの手の本にしては安いほうですし、これからWicketを始めようとする人にとっては必携の書でしょうね。
ただ、最後に一点だけ苦言を。Webアプリである以上、サンプルには大量のHTMLが載せられているのですが、その内容が酷いのはどうにかならんのでしょうか。これはこの本に限ったことではないのですが、正しいHTMLも書けずに「私はWeb技術者です」と言われてもなぁ。
……こんばんは、元W3C原理主義者です。
*1:内部的にはセッションを使いまくりなのですが、プログラマがそれを意識する必要はありません