今日のクライマックスシリーズは雨のため中止となりました。書くこともないので、ちょっと前のネタになりますが、一部で話題になった記事について取り上げたいと思います。
[理不尽CS、巨人が負けたら変わるのか :日本経済新聞](http://www.nikkei.com/article/DGXZZO60964820R11C13A0000000/)
日本経済新聞の記事なのに経済面についてまったく触れられておらず、人気絶頂期のスワローズからジャイアンツ、タイガースを渡り歩いた人には客が入らないチームの苦労はわからねーだろうな、で片付けてしまいたくもなりますが、それではこのエントリが終わってしまいます。もう少し読み込んでいくことにしましょう。
> しかし、下克上という言葉でかき消されているが、レギュラーシーズンの結果があまりに軽視されていて144試合をする意味すら考えさせられる。
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> [理不尽CS、巨人が負けたら変わるのか :日本経済新聞](http://www.nikkei.com/article/DGXZZO60964820R11C13A0000000/)
確かに最大で9試合しか行われないクライマックスシリーズの「予選」としては、144試合はあまりに長すぎるという考え方もあるでしょう。
2004年にパ・リーグにプレーオフが導入されて以来、福岡ダイエーホークス、福岡ソフトバンクホークス、松中信彦さんが多大な犠牲を払ったことにより、何度もルールが改正されてきました。今のルールでなければいけないわけでもありませんし、見直したほうがいいところは見直すべきでしょう。
> そしてリーグ優勝チーム同士がワールドシリーズを戦うという、 とてもシンプルでわかりやすい仕組みになっている。
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> [理不尽CS、巨人が負けたら変わるのか :日本経済新聞](http://www.nikkei.com/article/DGXZZO60964820R11C13A0000000/)
2004年に始まったパ・リーグのプレーオフは、もともと優勝チームを決めるためのものでした。現在のクライマックスシリーズは単に日本シリーズ出場権を争うものになっていますが、おそらくプレーオフ時代にホークスが負け続けなければ、今も勝ち抜いたチームが優勝として扱われているんじゃないかなと思っています。まあ、こんなことでたらればを言っても仕方がありませんけど。
> これには優勝をしていないチームにハードルを設け、地区シリーズまでに疲弊させるというディスアドバンテージを課す意味合いがある。
> 野球界以外でもプレーオフ制度のあるプロスポーツは、バスケットボールのNBAのように優勝以外のチームが多数プレーオフに進出する競技もあるが、おおむね地区優勝に相当するチームが有利にプレーオフを行う。
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疲弊に関しては議論するのが難しいところではありますので、今はそれを無視して考えてみましょう。日本のファーストステージも疲弊することは間違いありませんので、それほど無茶な前提でもないはずです。
単純に各チームの勝率を5割とした場合、メジャーの地区優勝の3チームがリーグ優勝できる確率は25%、ワイルドカードの2チームは12.5%となります。一方、日本はファイナルステージにアドバンテージがありますから、優勝チームが約65%、2位、3位のチームが約17%となります。TeXで書いて画像を作るのも面倒なので、計算式は省略させてくださいw
メジャーはワイルドカードの2倍。日本は2位3位の約4倍。私には日本のクライマックスシリーズのほうが圧倒的に優勝チームに有利なように見えますが、文章を書いているのは普段から「印象論ではなくデータを出せ」とおっしゃっている広澤さんですし、載せているのはDOCOMOのiPhone発売を何年も前から予測していた天下の日本経済新聞です。きっと私が間違っているのでしょう。近年はSEからデータサイエンティストに転身する方々も多いですし、私も少しデータの見方を勉強しなければいけないかもしれませんね。
> 広島の苦節を重ねた16年間と、69勝72敗3分けのレギュラーシーズンを負け越したチームが日本シリーズへ駒を進められるという事態を、わけて考えなくてはならない。
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> [理不尽CS、巨人が負けたら変わるのか :日本経済新聞](http://www.nikkei.com/article/DGXZZO60964820R11C13A0000000/)
まったくもっその通りです。だからこそ貴方も、借金を抱えたチームがCSに進出できることと、大差をつけられたチームがCSに進出できることをわけて考えなくてはなりません。
パ・リーグはどこぞのチームが2005年に借金持ちながら当時のプレーオフに進出して物議をかもしたので、正直言って何を今さら、という議論でしかありません。そもそも論ではありますが、借金については考えるのもおかしなことだと思っています。交流戦がある以上、理論上は優勝チームが5割を切る可能性もありますし、5割というラインを語ることに意味がないのです。私もシーズン中、何度か「今年のパ・リーグの5割は実質借金」と書いたことがあります。要するにそういうことです。
ゲーム差については、まあわからないでもありません。ある一定のゲーム差をつけたらアドバンテージを増やす、といった方法もあるでしょう。
ただ、ゲーム差にしろ、勝率にしろ、シーズンの結果によって出場チーム数が変わるような制度にするのはあまり好ましくないと思います。
2005年のことですが、1位と2位をホークスとマリーンズが争っていました。当時のルールでは、1位と2位が同率の場合、ファーストステージは行われず、1位と2位のみでプレーオフが行われることになっていました。このとき、すでに3位が確定していたライオンズが「次のホークス戦に負ければホークスの1位が確定し、それによってライオンズのプレーオフ進出が確定する」という立場に立ったことがあります。「負けたほうがいい試合」ができてしまったわけですね。
綿密にルールを練らない限り、こういったことがまた起こらないとも限りません。もし結果によって出場チーム数が変わってくるのであれば、そのときのルールは慎重に考えてほしいと思います。
> 「盛り上がればいい」「興行的にもうかればいい」という発想だけで考えていくと権威が失われ、今まで積み上げてきた伝統も損なわれかねない。
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冒頭にも似たようなことを書きましたが、興行的にもうからなければお話にならないでしょう。9年前に何が起きたか、もう忘れたんですかね。日本シリーズの権威とやらはプロ野球界の維持よりも大切なことなんですかね。
> 2位以下にこれだけのゲーム差をつけたのに、日本シリーズへ行けなかったとなれば黙ってはいられないだろう。そしてその声が大きければ大きいほど、この理不尽なプレーオフを変える動きも出てくるだろう。
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> [理不尽CS、巨人が負けたら変わるのか :日本経済新聞](http://www.nikkei.com/article/DGXZZO60964820R11C13A0000000/)
さすがに現役時代に何度もパ・リーグを馬鹿にした発言をしてきただけのことはあります。きっとパ・リーグに興味なんてないのでしょう。パ・リーグのプレーオフ、クライマックスシリーズの歴史を知らなすぎます。パ・リーグがとっくに通り過ぎ、なんとか折り合いをつけてきた問題点を「理不尽」の一言で片付けるのはどうなんでしょうね。語るのであれば最低限のことを調べてからにしたほうがいいんじゃないかと思います。
もちろん、現行のクライマックスシリーズはベストの制度ではないでしょう。しかし、プレーオフから数えると今年で10年目、少しずつルールが変えられてきており、それほど理不尽な制度にはなっていないはずです。もしこの制度が「理不尽」だと言うのであれば、その人はクライマックスシリーズ自体を認めてはいけません。それはそれで一つの見識だと思いますし、「優勝チームが日本シリーズに出場すること」が道理という立場であれば、この制度が「理不尽」であることは間違いないでしょう。
しかし、クライマックスシリーズを(しぶしぶながらも)認めつつ、今の制度を「理不尽」というのはちょっとわかりません。何をもって道理としているのでしょう。優勝チームが有利であることは守られていますし、2位3位にも奇跡を信じられる程度には可能性がある。なかなかいいバランスだと思います。大差で優勝したチームが日本シリーズに出られない可能性があるのが問題だというのなら、じゃあ大差の優勝は僅差の優勝よりも価値があるということでしょうか? 同じ優勝なのに?
……と、ここまで噛みついてきましたが、単純に広澤さんが「理不尽」という言葉の意味を深く考えずに使っている気がしてきました。(長文台無し)